日刊ゲンダイ
中国から個人輸入
がんと闘う気力も体力もあるが、「もう治療方法がありません」と医者からさじを投げられ、新たな治療法を求めてさまよう――。
そんながん難民の間で注目されているのが"遺伝子治療薬"だ。
従来の抗がん剤のように"劇薬"でがん細胞を殺すのではなく、がんを抑制する遺伝子を投与して、がん細胞の増殖サイクルを遮断するまったく新しい薬だ。
世界で唯一、製造・販売が認可されている中国では3000人以上に使われ、日本でも300人以上のがん患者が個人輸入しているという。どんな薬なのか?
大手企業に勤める30代のAさんは、4期の悪性黒色腫(メラノーマ)と診断された。主治医から「余命3カ月」と告げられたAさんは遺伝子治療薬の服用を決意。中国から個人輸入し、1年以上経ったいまも元気に暮らしている。Aさんの遺伝子治療を指導した、がん治療専門病院の「西新宿山手クリニック」の飯塚啓介院長が言う。
「Aさんが使ったのはP53遺伝子治療薬です。幸いAさんは、3回目の局所注射で腫瘍が消失しました。この薬はもともと頭頚(とうけい)部がん用に開発され、中国での治験では後期の頭頚部がん患者135人に投与し、放射線療法と併用したところ、6割以上で腫瘍の退縮が起きたとされています」
「本来、P53遺伝子は、異常な細胞の増殖を止めてアポトーシス(自殺)へと導く働きがあります。これに異常が起きるからがん細胞が増殖するわけで、正常なP53遺伝子を注入すれば、頭頚部がんに限らず、多くのがん細胞の増殖も止められるというわけです」
昨年3人の患者からP53遺伝子治療薬の指導を依頼された「カンクロクリニック」(東京・本郷)の黒崎弘正院長も言う。
「腹部リンパ節に転移した再発卵巣がんの50代の女性に、P53遺伝子治療薬の点滴と温熱療法を併用したところ、13ミリ×9ミリの腫瘍が10ミリ×7ミリに縮小しました。50代の再発すい臓がんの患者さんも、同様の治療法で効果が認められます」
治療は意外に簡単だ。1週間に1度点滴または局所注射を、6~8週間行うだけ。放射線、温熱療法と併用すればさらに効果的という。
気になるのは薬の品質と副作用だ。
「米国系企業が先進国の医療基準で管理しているので、品質は問題ありません。治療用遺伝子を治療する細胞に送り込む運び役(ベクター)として、病原性が弱いアデノウイルスなどを使っているため、点滴当日に38~40度の熱が出ることです」
中国以外の国では、この遺伝子治療薬は研究段階の薬。絶対安全とはいえず、薬代も数百万円かかる。ただ、がんをあきらめないためには、こういう手段もあることは知っておいた方がいい。
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