TOEICでリスニングの平均点が高いのはなぜ?
TOEICはリーディングよりもリスニングの方がスコアがとりやすい試験?
Q: 先日TOEICを受験したところ、リスニングのスコアの方がリーディングよりも50点くらい高い結果でした。リスニングには苦手意識があったので、少し意外でした。友人に「自分はリスニングの方が得意みたい」と話したところ、「リスニングの方がスコアが高いのは別に珍しくないよ。TOEICは元々リスニングの方がスコアがとりやすい試験なんだよ」と言われました。
TOEICではリスニングの方がスコアが取りやすいというのは、本当なのでしょうか?
A: 日本人のTOEICスコアを見た場合、リスニングの方がリーディングよりも平均的に高いというのは本当です。
TOEICではリスニングの平均点がリーディングよりも40~60点高かった!
TOEIC運営委員会が公表しているデータを見ると、TOEICではリスニングの平均点がリーディングよりも40~60点程度高いことが判ります。以下の表をご覧ください。
表. TOEICのリスニングセクションおよびリーディングセクション平均点の比較
(2005年10月~2006年9月実施分)
リスニング リーディング リスニングとリーディングの差
2005年10月 328.0 265.3 62.7
2005年11月 308.9 256.3 52.6
2006年1月 294.5 251.3 43.2
2006年3月 311.1 251.5 59.6
2006年5月 312.4 260.4 52
2006年6月 311.4 257.6 53.8
2006年7月 306.3 261.5 44.8
2006年9月 307.7 254.6 53.1
平均 310.0 257.3 52.7
註) リスニングセクション、リーディングセクションともに495点が最高点。TOEIC公式サイト掲載のデータを元に作成。
上の表は、2005年10月~2006年9月に日本で実施されたTOEIC公開テストにおける、リスニング、およびリーディングの平均点についてまとめたものです。
いずれの回でも、リスニングの方がリーディングよりも平均点が高くなっていることが判ります。平均点の差は、最も少ない2006年1月では43.2点ですが、2005年10月では60点以上もの大きな差がついています。
平均点のデータを見るかぎり、日本人のTOEICスコアの全般的な傾向として、「リーディングよりもリスニングの方が高くなる傾向にある」ということは事実のようです。
「日本人は英会話よりも読み書きの方が得意」という印象があるため、リスニングの方がスコアが高いというのは意外な感じがします。それでは、なぜ日本人のTOEICリスニングのスコアがリーディングのスコアよりも高いのでしょうか? TOEIC運営委員会の取材から、意外な事実がわかりました。
TOEICが開始された当時は、平均点に差はなかった!
それでは、なぜTOEICではリスニングの方がリーディングよりも平均点が高くなっているのでしょうか?
TOEIC運営委員会によれば、1979年にTOEICが日本で開始された際には、リーディングとリスニングの平均点がほぼ同じになるようにスコア基準を作成したと言います。現在でも引き続き当時と同じスコア基準を使用していますが、近年の日本人受験者の傾向として、リスニング・セクションの得点の方がリーディングよりも高い受験者が多くなってきたそうです。そのために、日本人のTOEICスコアではリスニング・セクションの方がリーディングよりも平均点が高くなってきたというわけです。
「リスニングの方が平均点が高いというのは、なんだか判りにくい。リスニングとリーディングの平均点が同じくらいになるように、スコアを調整すればいいのでは?」という意見が出てくるかもしれませんが、TOEICの場合はそういうわけにもいきません。
TOEICでリスニングの方が平均点が高いのはなぜ?
TOEICのような資格試験では、毎回のスコアの基準が一定していることが必要です。例えば、10月に取った「600点」と、11月に取った「600点」は、同水準の英語力を示していなくてはいけません。
もし、基準が一定していなかったとしたら、「同じ英語力の人が受けても、10月には600点が取れるのに、11月には500点しか取れない」といった事態も起こりえます。そうなると、英語力を測定する指針として、TOEICという試験が意味をなさなくなってしまいます。
そのような事態を防ぐために、TOEICでは、スコアの「等化(equating)」という処理を行っています。スコアの等化とは、試験のスコアの尺度(評価基準)を常に一定に保つための統計的な処理のことです。
TOEICではスコアの等化を行うことで、毎回の試験のスコア基準が一定に保たれています。わかりやすく言えば、「TOEICスコア600点の人が受験すると、試験問題や他の受験者にかかわらず、何回受験しても常に600点と判定される」ということです。
TOEICではスコアの等化を行っているため、1979年時点でのリスニング400点と、2006年時点でのリスニング400点というスコアは、同じ実力を示していないといけません。ですから、リスニングの方が平均点が高い傾向にあるからといって、スコアの基準を安易に修正することは出来ないのです。
TOEIC開始当時と比較して、日本人はリスニングが得意になった!?
TOEIC運営委員会が公表しているデータから、TOEICではリスニングの平均点がリーディングよりも40~60点程度高いことが判りました。
その理由としては、以下のことが判りました。
・ 1979年にTOEICが日本で開始された際には、リーディングとリスニングの平均点がほぼ同じになるようにスコア基準を作成した。
・ TOEICでは、現在でも1979年当時と同じスコアの尺度(評価基準)を使用している(スコアを等化するため)。
・ 近年はリスニング・セクションの得点の方がリーディングよりも高い日本人受験者が多くなってきた。
上の経緯を考えると、、「TOEICが開始された27年前と比較すると近年の日本人英語学習者はリスニングの方がリーディングよりも得意になった」という傾向が指摘できるかもしれません。
ただし、あくまでも1979年当時と近年のTOEIC受験者のスコアを比較しただけである、という点に注意する必要があります。当時とは受験者層が変わっている可能性がありますので、日本人全体の傾向に安易に広げて考えることは慎んだほうが良さそうです。
